「12月は職場のハラスメント撲滅月間」ポイント解説②ハラスメントtopics18
「12月のハラスメント撲滅月間」に毎年開催されている
「職場におけるハラスメント対策シンポジウム」(厚生労働省主催)の基調講演から、
グループ各社皆さんに留意して頂きたいポイントを、複数回に分けてお伝えしています。
第1回は、「中小企業におけるハラスメント対策」について、ご紹介しました。
今回は、「ハラスメントに対する企業の責任について」です。
2.ハラスメントに対する企業の義務と法的責任
加害者本人に損害賠償責任が生じます。
ハラスメント行為は法的に「不法な行為」(不法行為)に当たり、
加害者は、被害者に対し慰謝料などの損害賠償責任を負うことになります(民法709条)
その他、社内の懲戒処分の対象や、刑事責任になる可能性もあります。
(1)企業(使用者)の損害賠償責任
❶義務違反の責任(債務不履行責任)
大前提として、「信義則」を根拠とした安全配慮義務、職場環境配慮義務があり、
安全配慮義務違反、職場環境配慮義務違反として、債務不履行責任が生じます。(民法415条23)
-
-
- 信義則とは
-
ⓐ信義(信頼関係)が重要であるというルールを「信義則」と言う。
労契法3条4項:労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
ⓑ信義則を根拠として、契約書や規則等に定めがなくとも、当事者間に一定の関係性があれば義務が生じると考える。
-
-
- 労働契約法第五条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
- 労働契約法第五条(労働者の安全への配慮)
-
安全配慮義務がある以上、使用者には様々なハラスメントを予防し、対応することが求められることになります。
❷ 使用者責任
ハラスメント行為を行った加害者の「雇い主(使用者)」としての使用者責任があります。(民法715条)
使用者責任とは
企業などの使用者は、従業員が「事業の執行に際し」、他人(ハラスメントの場合はハラスメントの被害者)に不法行為等で与えた損害を賠償する責任
民法715条1項:ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。(以下略)
(2)ハラスメントと労災
職場のハラスメントが原因でうつ病などの精神疾患を発症し、休業や自殺等に至った場合、業務上の災害(労働災害)と扱われます。
労災保険の給付でカバーされない部分については、労災が認定されたとしても、さらに使用者側に損害賠償請求が可能となります。
まとめ
企業は、その行為がハラスメントであるかないかを判断することとは別に、大前提として、安全配慮義務があり、社員が安全に働ける職場環境を保持しなければなりません。
また、使用者責任において、
職場のハラスメントが「加害者の責任である」とか、「当事者同士の問題である」として、責任を逃れることはできません。
(第3回へ続く)
出典・参照
「職場におけるハラスメント対策シンポジウム」基調講演(2022/12/07)
従業員が辞めない!明るくイキイキ働ける職場へ
~中小企業も取り組みやすい、ハラスメント対策のポイント
成蹊大学法学部 原 昌登 教授