活動報告書「対話型鑑賞 入門講座・ファシリテーション講座」の受講

社会福祉法人みんなでいきる NASC
菅井 豊子

対話型鑑賞 STEP1 入門講座プログラム
(京都造形芸術大学アート・コミュニケ―ション研究センターACOPによる講座)

日にち :2018年 8月11日 ~ 8月12日

活動報告
今回のSTEP1では「鑑賞者」として、作品鑑賞の基礎である観察力・批判的思考力・言語能力を高めることを目的に、対話型鑑賞の意義や可能性について基礎レクチャーを受けた後、
2日間で6回の作品鑑賞を体験した。

作品鑑賞では、スクリーンに映し出されるアート作品の写真を各自で15分ほどじっくり鑑賞し、その後、作品について気づいたことや疑問に思ったことなどを発言し、「問い」→「仮説」→「検証」を繰り返しながら、作品を能動的に鑑賞することを学んだ。

また、作品に込められた意図や、鑑賞者の創造的解釈から生まれる新しい意味を付加することで、作品の世界が広がっていく楽しさも体験した。作品には作者の意図が込められているが、意図を読み解くことが重要なのではなく、そこに鑑賞者が創造的な解釈を加えていくことで作品はより豊かなものになり、それこそが本来の「作品鑑賞」であると教えを受けた。

作品鑑賞を通して身につくこと
①知的探求心が刺激される
②目的意識をもった観察力
③正解のない問いに取り組む力
④創造的解釈
 →奥深い意味を読み解く力
⑤体系的に論理的に見る力
 →自分が思ったことの根拠を作品の中にみつけ、それを言語化する力
⑥言語能力
より適切な言葉を、記憶の中から呼び起こし、それを適切に組み立てるという作業
⑦コミュニケーションの基礎
⑧人間関係の基本を学べる
 多様性の受容 →他者と生きていくための基礎
⑨自己対話力

今後の取組みについて
上記に書いた ≪作品鑑賞を通して身につくこと≫ は、美術鑑賞に必要な力というだけでなく、会社のチーム作りや人材育成にも不可欠な力だと感じた。

今回の研修の中では、アート作品だけでなく、マンガで対話鑑賞をする「マンガ読解」というワークショップもあった。4~5人のグループに分かれ、グループのメンバーと1コマずつ描かれている趣旨を検討して、マンガのストーリーを1つにまとめるという内容。

このマンガ読解から、下記のようなことが体験できるので、大島グループのチームづくり研修でも役立つのではないか?と思った。

●同じコマを見ていても、人ぞれぞれに受け止め方が違い、様々な側面や解釈があることを理解する
→モノゴトには自分には見えていない側面があることを考慮する
→多面的、多角的な理解が必要
●コンセンサス(合意形成)をとるために必要なことは何か?
「相手の話を理解するための聴き方」、「相手に自分の考えを伝えるための話し方」を考える
→発言の根拠やプロセスを意識する
●異なる視点が交わることで新たな視点が生まれる。
 →「AかBか」ではなく、「AとBからCを生む」

対話型鑑賞 STEP2 ファシリテーション講座プログラム
(京都造形芸術大学アート・コミュニケ―ション研究センターACOPによる講座)

日にち :2018年 9月1日 ~ 9月2日

活動報告
前回は「鑑賞者」の立場から対話型鑑賞の意義や可能性について学んだが、今回のSTEP2では「ファシリテーター」の役割を理解し、実際にファシリテーターを体験するのが目的。

ファシリテーターとしての「基本姿勢」や「聴き方」、「問いかけの構造」などについてレクチャーを受けた。

また、講師がファシリテーターをしている映像を見ながら、ファシリテーターと複数の鑑賞者との間でどんな言葉のやり取り(対話)がされてるのか、音声を全て書き起こしファシリテーションの分析をした。その後、参加者一人一人がファシリテーターとなり、実際に対話型鑑賞を行った。

ファシリテーター体験では、一人ひとりに題材となる作品が配布された。私は、岸田劉生の『麗子微笑』だった。中高生の頃に見たことがあるが詳しい知識は全くなく、不安と緊張で頭が真っ白になった。

ファシリテーターは作品に対しての基本知識は必要だが、対話型鑑賞の目的は、知識を教えることではなく、問いかけを通して、鑑賞者の探求心や観察力、思ったことの根拠を作品の中にみつけ、それを言語化する力などを育むことが目的であると実践の中でも教えてもらった。

日頃から司会をしている私は、「ファシリテーターはそれなりにできるだろう!」と少しの自信があった。しかし、実際にやってみると、司会のスキルだけでは全く通用しなかった。

鑑賞者がバラバラに発言する言葉を全体の対話としてどう構築していくのか、鑑賞者に新たな気付きを促すためにどう問いかければいいのか?……など、対話型鑑賞のファシリテーターとしての高いスキルが必要であることを痛感した。このスキルは一朝一夕に身につくものではなく実践の積み重ねの中で体得していくものだと思った。

対話型鑑賞におけるファシリテーターのポイント
①ファシリテーターの基本姿勢
・鑑賞者が(学習者・参加者)が主体
・ファシリテーターは指導者・主導者ではない
・一方的な「教える/教わる」関係ではなく、互いに「学ぶ/促す」関係をつくる
・オープン(率直)に対等に話し合える場をつくる

②ファシリテーターの聴き方
鑑賞者の意見(考え)の中にある「事実」と「解釈」を意識的に聴き分ける。
【事実】誰にとっても同じ / 【解釈】人によって異なる
③ファシリテーターの問いかけの基本的な構造
・どう思った?  →主体的な観察とオープンな解釈を促す
・どこからそう思った? →解釈の根拠となる事実を訊く(たずねる)
・そこからどう考える? →事実から解釈を促す
・他に/もっと! →別の解釈や事実がある可能性に目を向ける

④ファシリテーターも鑑賞者も基本的に同じ
事実と解釈を意識しながら「どう思ったかな?」「どこから思ったかな?」「そこから何が考えられるかな?」「他にないかな?」と考えるのは、鑑賞者もファシリテーターも同じ。
ただ、ファシリテーターは鑑賞者以上に作品だけでなく、鑑賞者のことも「見て、考えて、話して、聴く」ことが必要。

今後の取組みについて
ファシリテーターの役割を学ぶ中で、これは対話型鑑賞の場面だけでなく、会社内のコミュニケーションでも通じることが多いと思った。

例えば、上記で赤字にした①や②の部分は、チームづくりや話しの聴き方スキルとしても重要だと思う。また③も管理職と部下が話す時など、パワーバランスで一方的に話を進めるのではなく、相手(部下)の存在を大事にした問いかけを織り交ぜることが、良い関係性と「主体的に考え・主体的に動く部下」を育むベースになると感じた。

最後に、④の文章中の「ファシリテーター」を「管理職」に、「鑑賞者」を「部下」に置き換えるとこんな文章になる。

管理職部下も基本的に同じ
事実と解釈を意識しながら「どう思ったか?」「どこから思ったか?」「そこから何が考えられるか?」「他にないか?」と考えるのは、部下管理職も同じ。
ただ、管理職部下以上に作品だけでなく、部下のことも「見て、考えて、話して、聴く」ことが必要。

今後仕事をする中で、自分が部下でも、管理職の立場でも、「見て、考えて、話して、聴く」に意識を向け、対話型鑑賞で学んだことを活用していきたいと思う。

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