東大「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」~行動ガイドラインから学ぶ
「東京大学ダイバーシティ&インクルージョン宣言」(2022年制定)から、
この度、理念の実現に向けた取組の一環として、
「東京大学における性的指向と性自認の多様性に関する学生のための行動ガイドライン」
が策定されました。
このガイドラインは、ニュースやSNSでも話題になったため、ご存じの方も多いかと思います。性的指向と性自認に関する思いこみや無意識の偏見からくる差別的言動について解説したもので、日頃のコミュニケーションやハラスメント防止の観点でも大変参考になります。
以下、ガイドラインから抜粋して引用します。
「2.SOGI 関連 大学生活上で直面する典型的な障害の例」 から
教員が講義やゼミにおいて:
- 名簿あるいは外見から推測される性別に従って呼称の使い分けをする(「〜さん」「〜くん」の使い分け)。
- 「男子はみんな彼女が欲しいだろうけれど」などのバイナリーかつ異性愛を前提とした発言をする。
- 「この研究者は私生活ではコッチの人だったんだよね」と冗談や軽口として言ったり、「特殊な性癖があってね」と言ったりするなど、同性愛差別的な発言をする。
事務職員が窓口対応等で:
- 事務窓口で周囲にいる他の学生に聞こえるくらい大きな声で「性別変更の手続きをしたいのですね」「健康診断に個別配慮が必要なんですね」と聞き返す等、プライバシーへの配慮が乏しい対応をする。
学生同士の関係の中で:
- 「彼氏/彼女いないの?」「好きな男性/女性のタイプは?」「合コン行こうよ/行かないの?」「イケメンなのになんで彼女ができないの?」等、バイナリーかつ異性愛を前提とした発言を行う。
- 「LGBTQは生理的に受け付けない」「女性のように振る舞う男性は気持ち悪い」「お前がホモだったら友達やめる」等、LGBTQを嫌悪・侮蔑・嘲笑の対象として取り上げる。
- 相手の同意を得ずに、カミングアウトした相手の性自認・性的指向を第三者に知らせる(アウティング)。
その他の関係の中で:
- カミングアウトした際の、「一時の気の迷いだ」といった非受容や拒否の態度。「いつか治ると思っている」といったことばのように、仮にそれが善意からのものであったとしても、当事者の状況が「治し」(「治療」)の対象であるかのように捉えることで、結果的に当事者に対して非受容や拒否を突きつけてしまう態度。
「4.おわりに」から
個々では、想定されるいくつかの反論に答える形で解説もしています。
(その1)
東大で行われている女性学生比率の向上や女性教員比率の向上など「女性」限定した取り組みが、逆に構成員の性的指向と性自認の多様性に反して、「女性」としての枠組みを一方的に当てはめるものではないか」
と言う問いに対して、
「明治期以来の歴史的な経緯により、東京大学の構成員が『男性』に著しく同質化してきた傾向」があることを認め、「旧来の強い同質化傾向を打破し、より多様な人員構成を企図することと、性的指向と性自認の多様性を認知・尊重する姿勢を推進するという基本方針とに相反するものではない」
としています。
(その2)
「人に対して、また人について、何も言えなくなるのではないかとか、何も言わなければいいのではないとか」
と言う問いに対して、
誰もが「無意識的な偏見」(アンコンシャス・バイアス)にとらわれていることを前提に、自覚することが困難な偏見を自覚化できるのは、人とのコミュニケーションのなかにおいてである、
としています。
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興味を持った方はぜひとも原文をお読みください。
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さて、大島グループに、現場の日常にある言動に翻って考えます。
新入社員や新しく関りを持つ人に対して、打ち解けよう、親しみを表そうとして、外見(見た目)、彼氏彼女・結婚・子どもなどプライバシーに関わることを話題にすることがあります。昔はよくありましたし、やりました。
親しくなりたい、親しい間柄だと思っても、それはこちらから相手への一方的な気持ちに過ぎないかもしれません。
「自分たちはこうしてきたからこれでいいんだ」、「(昔からのやり方・考え方で)これが当たり前」、「そんなこと言ったら、何も言えなくなってしまう」等々、思い込みや無意識の偏見があることをまずは意識して、虚心坦懐に話を聴くことから始めてみてはいかがでしょうか。
ハラスメント防止対策委員会/ランドスタッフ 重嶋
(ハラスメントtopics_23)